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利用部門を巻き込んだリニューアルプロジェクトを通して、
全ての職員が使い、作っていくポータルを実現。

豊島区では、平成12年に情報通信基盤の基本方針として「豊島区行政情報化推進計画」を策定し、ネットワークや情報機器などの情報通信基盤を整備し有効活用することで、事務処理の効率化・高度化を図り、区民サービスの飛躍的な向上を目指しています。この計画に基づき、庁内の情報共有化推進のためにMicrosoft Office SharePoint Serverが導入され、利用が開始された職員ポータルですが、実際には利用者である職員の方々にとって、何に使えるのか、どうやって使っていいのかわからないという声が多く、業務において日常的に職員ポータルを利用している人は限定的であったといいます。このような利用状況に対してディスカバリーズでは、職員の業務や利用ログデータから現状を解析し、職員が業務で必要な情報の配置とナビゲーションを見直す情報設計を行い、全庁公開しました。このリニューアルにより実に70%を超える職員が満足する結果となり、利用意向も高まったことから、今後も積極的に業務で活用する取り組みが始まっています。

背景と狙い

豊島区では、情報化推進計画に沿ってSharePointを導入し、公文書の一元管理を目指しました。導入の主な目的は起案文書以外の文書の管理で、ワードやエクセルファイルを簡単に保存でき、保管したファイルを検索できる点に期待していました。また同時に職員ポータルを立ち上げ、庁内の情報共有を進めることで業務の合理化を図り、住民サービスの向上を目指したいと考えていました。しかしながら、職員ポータルは職員にとって使いにくく、利用が進まないということが、情報共有を進める上での大きな課題となっていました。情報管理課では、職員ポータルが職員にとって身近で使いやすいものになることこそ、本来の目的である組織としての文書管理を進めることにつながると考え、ディスカバリーズ社と一緒にポータルのリニューアルを検討し始めました。

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豊島区 政策経営部
情報管理課長 高橋 邦夫 氏

リニューアルに向けた取り組み

10の利用部門への徹底的なヒアリング
ディスカバリーズは、豊島区内での職員の特性を把握し、業務におけるニーズを明確化するために、定性的な調査として10の利用部門への徹底的なヒアリングを実施しました。ヒアリング結果から、「ポータルで何ができるかわからない」 「必要な情報に到達しない」 「マニュアルや利用ガイドラインがない」など、職員が抱える様々な課題が明らかになりました。また業務での情報収集や情報共有に対する具体的な要求事項を収集するために、定量的な調査としてアンケートも実施しました。アンケートでは職員のポータルへの満足度が低い結果となりましたが、より詳細な分析により満足度を高める要因として情報の探しやすさがきわめて重要な要素であることが導き出されました。

アクセスログ分析に基づいた仮説立案
その上で現状の職員ポータルのアクセスログを解析し、ポータルの利用状況と職員の行動分析を行いました。その結果、多くの職員は文書管理や掲示板など特定の目的でのみポータルにアクセスしていること、情報探索の際に検索機能がほとんど使用されていないことが明らかになりました。こうした事実からポータルやナビゲーションの設計、新たに追加するコンテンツなど、ポータルの使いやすさを改善する仮説を立案しました。

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ポータル、部門サイトで情報と人の流れを作る
ヒアリングやアクセスログ分析の結果から、使いやすさと情報の探しやすさの向上を重視し、職員ポータル全体のサイト構成、掲載コンテンツ、各ページ内の情報構成を再設計しました。
具体的には、各課が情報を発信するための部門サイトを全課に提供し、いつでも気軽に情報発信できる場を用意し、職員がポータルをスムーズに利用できるように、操作方法だけでなく活用方法を記載したマニュアルを提供しました。これにより部門間の情報共有を活性化させ、業務効率化を図ることを実現しました。
この結果、リニューアル前は1~2クリックでドキュメントに到達する割合は64.5%でしたが、リニューアル後は84.1%と大幅に改善されました。

 

プル型ポータルにプッシュ型メールでメディアミックス
職員の情報活用を促進することにも注力しました。従来紙で発行していた職員報をデジタル化して職員ポータル上に掲載し、このサマリー版をHTML形式のメールで全職員へ配信し、ポータルに誘導するという仕組みに変更しました。これにより職員に対して有益な情報を届けることができるようになり、ポータルへのアクセスを促進することができました。

効果と評価

「SharePointは文書管理機能のために導入されたため、情報管理課でもポータルとしての利用については知識がなく、使い方のノウハウも全くありませんでした。このため、グループウェアから移行して2年間利用しましたが、実際には活用があまり進んでいないという状況でした。このような課題を抱えて、ディスカバリーズ社にログ分析してもらい視覚的に問題点をイメージできた上で、段階的な活用のレベルを上げていくロードマップ(工程表)を策定してもらい、リニューアル後の道筋が明確になったことが非常に効果的でした。新旧ポータルについての職員アンケートの結果から、操作性、情報の探しやすさ、インターフェイス、業務での利用意向のすべての項目において、職員からプラスの評価が得られ、職員ポータルリニューアルの成果として大変満足しています。職員ポータルから情報発信としての第一歩が踏み出せると実感しました。」

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豊島区
政策経営部 情報管理課
庁内LANグループ情報担当係長
木本 隆 氏

本プロジェクト実施以前はSharePointの機能については知識がなく、情報管理課で書籍をみながら試行錯誤してポータルを作成していた状態で、まさか現在のように職員全員がポータルを使えるようになるとは思いもよりませんでした。ポータルリニューアルでの大きな改善点としては、①情報が探しやすくなったこと、②以前は単に文書を置くだけのものであったポータルが、職員皆が触れられる、また作っていけるポータルになったこと、③情報発信ができる場として利用されるようになったことが挙げられます。まさに期待をはるかに超える成果が得られたと実感しています。また今回のプロジェクトでは、SharePointの標準機能のみでポータルをリニューアルしたいという強い希望がありましたが、まさにその通りに実現でき、各課が抱える課題に対して標準機能を駆使して業務を効率化できたことがとても有意義でした。文書の分け方、情報の探しやすさなど構想そのものが大事だと思いますが、その段階からサポートしてもらえたことがより効果的でした。」

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豊島区
政策経営部 情報管理課
庁内LANグループ
入澤 昌利 氏

今後の展望

豊島区では、今後も定期的にアンケートの実施およびログ分析を行い、継続的にコンテンツの見直しを図りながら、職員ポータルの活用をさらに進められています。「全課の部門サイトが立ち上がり各課から情報の発信が可能となった折には、次のステップとして統計や情報収集など部門を越えたつながりを作っていくことを実現したい」と情報管理課では次なる構想を持ってポータル改善に取り組んでいます。「ディスカバリーズ社から受けた将来を見越した提案をもとに庁内でのポータルの活用を進めてきました。今後は個人用サイトを立ち上げたり、他のコミュニケーションツールと連携させて情報化推進計画の実現を加速し、住民サービスを向上していきたいと考えています」と高橋氏は語っています。

事例公開日:2010年6月21日