ディスカバリーズ、東京大学大学院とオカムラがハイブリッド・ワークにおけるクリエイティビティと時間・場所の研究について共同論文を発表 -多様性が高まる場所では革新行動が高いことを確認-
2024.06.27

ディスカバリーズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:島田祐一朗、以下ディスカバリーズ)は、東京大学大学院経済学研究科 稲水 伸行准教授の研究室 (以下、稲水研究室)と株式会社オカムラ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役 社長執行役員:中村 雅行、以下オカムラ)と共同研究していた、時間単位の行動データを用いたハイブリッド・ワークの研究について、共著で論文を公開したことを発表しました。

ディスカバリーズは、業務アプリの利用状況から働き方の実態を可視化するクラウドサービス「IntelliReport」を提供して、抽出した課題から業務改善を図るDXのコンサルティング・サービスを提供しています。今回、東京大学大学院、株式会社オカムラとともに、オフィス内外での行動データを分析して、ハイブリッド・ワークにおけるクリエイティビティ(創造性、革新性)の高い働き方のモデルを発見して、組織学会学術誌「組織科学」に、論文「時間展望とクリエイティビティ:細かい時間単位の行動データを用いたハイブリッド・ワークの分析」を共著で発表しました。

これまでの背景

近年、働き方に最適なオフィス環境としてActivity – Based Working (ABW)が注目を集めていましたが、新型コロナウイルス感染症の流行によってオフィスに限定されない働き方が広まり、従来のオフィス内に加えてオフィス以外での環境でICTを用いたオンライン上での行動も考慮したハイブリッド・ワークにおける環境の研究が求められていました。
ディスカバリーズは、従業員ビックデータを収集・分析する IntelliReport©︎ を通じて、オンライン上のコミュニケーションログを使用した働き方の分析として、2020年12月より共同研究に参画しました。

詳しい研究概要はこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000025504.html

研究目的

本研究では、オフィスの使い方というオフラインでの行動と、チャットなどのオンラインでの行動の両面からワーカーの行動を分析・検証し、オフィス内のどの場所にどのように時間を配分すれば、業務で望ましい結果に繋がるのか(クリエイティビティ=創造/革新行動)を明らかにすることを目的にしています。

結果調査対象の家具メーカーX社のオフィスで働く4つの事業部、従業員257名のにおいて、ビーコン※1によるオフィス内の行動データ、IntelliReport©︎ を使用したオンライン上の行動データ(ビジネスチャットデータ)、質問紙調査による回答の3点を組み合わせたデータセットを用いた分析を行いました。

その結果、クリエイティビティの高い人の行動パターンとして、物理的・空間的にオフィス環境に制約されず、オフィス内利用場所の多様性が中程度である(高過ぎず、低過ぎない)ということが明らかになりました。多様性が高まる場所や空間では革新行動が高い、そして、働く時間や配分を主体的に選択できることが重要であることを示唆しています。

■具体的な行動の傾向:
・ オフィス内利用状況は、約80%は特定の場所におり、約20%は別の場所にいる(多様性:2920.70)
・ チャットコミュニケーションとオフィス内利用場所の多様性に比べると平均的に高く、オフィス内利用場所が多様な人ほどチャット日数と1日平均チャット数が多い。また、チャットグループの多様性も高い
・ オフィスとチャットの両行動データの関係についてみると、出社日数が多いほどチャットグループの多様性が高い

※1:極低電力の近距離無線通信規格「Bluetooth Low Energy(BLE)」を利用した位置特定技術ないしはそのデバイスのこと

論文

題名:「時間展望とクリエイティビティ:細かい時間単位の行動データを用いたハイブリッド・ワークの分析」
著者名:稲水 伸行(東京大学大学院経済学研究科 准教授)、牧島 満(株式会社オカムラ ワークデザイン研究所 チーフリサーチャー)、島田 祐一朗(ディスカバリーズ株式会社 代表取締役社長)
書誌情報:組織学会学術誌『組織科学 組織の寿命と未来の時間展望 第56巻 1号』(2022年9月20日発行)

今後の展開

これまで、テレワーク、オフィス、クリエイティビティの各研究が分断され、時間単位ほど細かい行動データを使って分析されることは殆どありませんでした。本研究では行動データをより細かく分析することで組織パフォーマンスとの関係を明らかにできことは、クリエイティビティ以外にも生産性やエンゲージメント等の組織マネジメントのテーマにも広げられる可能性を示すものであり、更なる探索を続けながら、こうした知見をハイブリッド・ワークや組織改革を目指す組織に提供してまいります。

■東京大学大学院経済学研究科 准教授 稲水伸行様より
ハイブリッド・ワークへの関心が高まる中、これまで以上に細かい時間単位での行動データをリアルとヴァーチャルの両面から取得し、分析することが必要となっています。本論文は、こうした研究の先駆けとなるもので、オフィス内利用場所の多様性が中程度の時にクリエイティビティが高くなることを明らかにしました。このことは、場所と時間の制約がなくなる中、主体的にそれらの配分を選択できていることの重要性を示唆するものでした。今後はこの点についてさらなる検証を進めていく予定です。

■株式会社オカムラ オフィス環境事業本部 ワークデザイン研究所 所長 森田舞様より
ハイブリッド・ワークは急速に普及しましたが、「働き方の選択肢が増えたことで、クリエイティビティは上がっているのだろうか」と疑問に感じる人も多いと思います。本論文ではハイブリッド・ワーク下で起こる行動を詳細に捉え、「オフィス内のスペース利用状況」「オンライン上の交流」「クリエイティビティの状態」を掛け合わせて特徴を明らかにしたことが大きな研究成果だと考えています。これからも、多様化する働き方・働く場の課題を捉え、研究を進めていきます。

各社の概要

・ディスカバリーズ株式会社
「働くすべての人たちがイノベーションをもたらす世界を創る」をミッションに、組織のコミュニケーションやコラボレーションを再設計し、新しい価値(=イノベーション)を生みやすい組織変革を目指したDX (デジタル・トランスフォーメーション) を実現するクラウドサービスとコンサルティング・サービスを提供しています。
https://discoveries.co.jp

・株式会社オカムラ
株式会社オカムラは、オフィス、教育・医療・研究・商業施設、物流センターなど、さまざまなシーンにおいて、質の高い製品とサービスを提供しています。あらゆる分野の知識・技術を生かした「総合力」を強みとし、快適な空間創造を目指します。「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をオカムラのミッションとし、企業価値のさらなる向上に努めております。
http://www.okamura.co.jp/

・東京大学大学院経済学研究科 稲水 伸行准教授 研究室
2003年東京大学経済学部卒業、2008年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、2005年〜2008年 日本学術振興会特別研究員(DC1)、その後、東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員、同特任助教、筑波大学ビジネスサイエンス系准教授を経て、2016年より現職にあります。博士(経済学)(東京大学, 2008年)。企業との共同研究によるオフィス学プロジェクトを主宰しており、主な著作として『流動化する組織の意思決定』(東京大学出版会, 第31回 組織学会高宮賞 著作部門 受賞)などがあります。

■本ソリューションに関するお問い合わせ先
ディスカバリーズ株式会社 プロダクトビジネスグループ プロダクトマーケティングユニット
E-mail:contact@discoveries.co.jp