パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社(PEX)は、パナソニックグループ約8万人を対象とした生成 AI 基盤「PX-AI」の活用定着を推進しています。ディスカバリーズは、学習コンテンツの企画・制作やコミュニティ運営、継続的な情報発信などを支援。従業員が AI を継続的に学び活用できる環境づくりに貢献し、グループ全体での生成 AI 活用の浸透と定着を後押ししました。

導入前の課題

  • AI の導入にとどまらず、グループ全体で AI 活用を進め、企業の風土変容まで視野に入れた業務変革プロジェクトとして推進する必要があった。
  • 従業員が自律的に活用を続けるための情報発信・コミュニティ運営の仕組みを構築する必要があったが、ノウハウも人員も足りていなかった。

導入後の効果

  • ユーザーひとりあたり月間約7.5時間の業務時間短縮効果が得られ、AI 活用率は国内従業員の約9割。
  • AI の導入にとどまらず、挑戦を是とする文化の醸成として着実に成果が出ている。
  • パナソニックの組織文化・事業特性を踏まえた推進企画により、一方通行でなくユーザーが自律的に参加できる自然発生的な交流が生まれるコミュニティ運営が実現。

企業の風土改革を目指す PX(Panasonic Transformation)の取り組み

パナソニックグループは、創業から100年以上の歴史を持つ日本を代表する総合電機メーカーであり、家電からデバイス、エネルギー、産業用ソリューションまで幅広く事業を展開しています。同グループでは近年、DX の取り組みをデジタルの領域に留まらない経営基盤強化のための重要戦略として位置づけ、2021年から「Panasonic Transformation(以下、PX)」と称した業務変革を推進してきました。この取り組みを、情報システムに関する専門的な知見やノウハウで支えているのが、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社のデジタル戦略本部です。

パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部 イノベーション共創課 エキスパート 橋川 昌和氏
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部
イノベーション共創課 エキスパート 橋川 昌和氏

パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部 イノベーション共創課 エキスパートの橋川 昌和氏は、PX についてこう語ります。「継続的かつ挑戦的な終わりのない業務変革を目指すのが PX です。PX の推進によって、これまで慎重にものごとを進めがちだったパナソニックの風土まで変革し、失敗を恐れず挑戦する文化が全従業員に刷り込まれるくらいまで、やり切ることを目指しています」(橋川氏)

同グループではさらに、PX の取り組みに AI 活用を組み込んだ企業成長イニシアチブとして2025年に「Panasonic Go」を発表。グループ全体の AI 活用を推進することにより、2035年までに全体の売上高の3割を AI 関連事業で生み出すことと、AI 活用による業務変革を実現することを目標として掲げています。

AI への挑戦を経営層の決断が後押し。月間約7.5時間/人の業務時間削減を達成

同グループが AI 導入に向けた取り組みを開始したのは、生成 AI が世界的に話題になり始めた初期の頃のことでした。2022年頃にはすでに、パナソニック コネクト株式会社(当時)が、AI チャットツールの内製化に取り組んでいたそうです。「PX の浸透によって、新しい技術である AI に挑戦する機運が醸成されていたと思います。さらにこの流れを、経営陣の決断が後押ししてくれました」と振り返る橋川氏。PX の旗振り役である玉置 肇 グループ CTRO(当時、グループ CIO)が、この内製 AI チャットツールの全社展開を決断。その決定からわずかひと月後の2023年4月には、すべてのグループ従業員を対象とした生成 AI ツール「PX-AI」がリリースされました。

パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部 イノベーション共創課 シニアエキスパート 井上 幸則氏
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部
イノベーション共創課 シニアエキスパート 井上 幸則氏

同時に AI 活用に関するルール整備も進められ、PX-AI のリリースに合わせて「生成 AI 活用心得帖」と称したガイドラインを策定。PX-AI はその後改修が重ねられ、現在ではマルチ LLM や Web 検索機能も実装するなど、「誰もが使える AI 活用の入口」として、約8万人が活用するほどの巨大な AI プラットフォームに成長しています。

また同グループでは、PX-AI と並行してさまざまな AI ツールの活用も進めています。「8万人もの利用者がいれば、それだけ AI の用途も幅広いものになります。結果的に PX-AI だけでは補えない部分も出てくるので、用途に合わせて有償版の Microsoft 365 Copilot や Google NotebookLM などの活用も推奨しています。また社内情報を使いたいというニーズにも応えられるように、汎用的な RAG 環境である PX-AI Plus も実装しています」(橋川氏)

「PX-AI の浸透度は非常に高いと感じています」と語るのは、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部 イノベーション共創課 シニアエキスパートの井上 幸則氏です。「定期的に用途の分析を行っているのですが、開始当初は文章の校正やプログラミング支援などが主な使い道でした。ただ、最近は高度な結果を返せる LLM が組み込まれたこともあり、長文作成やプログラミングコードのデバッグなどで使われることも増えているようです」(井上氏)

ユーザーアンケートによると、ひとりあたり月間約7.5時間の業務時間削減効果が得られており、利用者全体では月間約29万時間もの業務効率化を実現できているとのこと。井上氏は「ユーザーの定着率を高めるためにも、引き続きさまざまなツールを使い分けられる環境を用意したい」と展望を語ります。

AI 活用定着の鍵を握るコミュニティ運営や学習コンテンツ

8万人規模の AI 活用を実現したパナソニックグループ。その成功要因を橋川氏は次のように分析しています。「経営陣が AI 活用を推奨してくれたこと、PX-AI という AI 活用の入口をいち早く用意できたこと、そして適切な情報発信——この三位一体の取り組みが今日につながっていると思います」(橋川氏)

ツールを整備するだけでなく、「使い続けてもらうための情報発信・コミュニティ運営」が変革の要だったという橋川氏。その実現のために同グループが重視したのが、ソフト面の仕組みづくりです。

「AI を活用できる環境を用意したとしても、どのように使えばよいか理解できなければ、活用は進みません」と橋川氏。従業員の理解度をあげるためには、グループ全社に向けたブランディングやマーケティング活動が重要であり、その一環である動画コンテンツ制作、コミュニティ運営など、専門性が求められる領域のサポートをディスカバリーズが担っています。

ディスカバリーズと同グループとの協業体制が始まったのは2021年。当時、Microsoft 365 活用を促すための社内情報発信を強化しようとした際、Microsoft パートナー企業であるディスカバリーズに相談したことがきっかけでした。以来、SharePoint Online によるポータルサイト制作や、発信コンテンツ制作などのプロジェクトで協業が続いており、AI 導入・定着プロジェクトにおいても、Teams の AI コミュニティ運営や学習コンテンツ提案などの支援が提供されています。

Teams 上で運営されている生成 AI 活用コラムなどの AI コミュニティ運営イメージ
Teams での AI コミュニティ運営イメージ

各グループ企業の風土や業務性質を理解した PDCA サイクル

橋川氏、井上氏とともに社内の AI 推進に携わるパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部 イノベーション共創課 エキスパートの小畠 久輝氏も、ディスカバリーズの支援を高く評価します。「一般的な施策をそのまま持ってくるのではなく、パナソニックグループという会社の業務や風土、従業員の性質を理解したうえで提案してくれるのがありがたいですね。PX による行動変容を目指す当社にとって、カスタマーサクセスの分野に強みを持つディスカバリーズの支援はとても頼もしいです」(小畠氏)

パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部 イノベーション共創課 エキスパート 小畠 久輝氏
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
デジタル戦略本部 ビジネスエンゲージメント部
イノベーション共創課 エキスパート 小畠 久輝氏

特に評価されているのが、コンテンツ制作やツール活用にとどまらない、企画設計・年間計画の段階からの関与です。井上氏も、「たとえば、ユーザーに自発的に AI を使ってもらうための施策を、私たちだけで手法まで落とし込むのは至難の業です。ですが、ディスカバリーズに相談すると、動画やコラムなどを駆使したユーザーを飽きさせないコンテンツを提案してくれるんです」と続けます。さらに橋川氏も「事例紹介記事ひとつとっても、しっかりと取材対象にヒアリングして見た目も綺麗に整えてくれます。これを私たちがつくったとしたら、文字ばかりの無味乾燥なデザインでユーザーに届きにくいものになってしまいかねませんから、とても助かっています」とディスカバリーズとの協業に大きな意義を感じているといいます。

現在、ディスカバリーズが運営を支援する Teams の AI コミュニティには全社から、のべ約3.1万人ものユーザーが参加。頻繁なコンテンツの更新と充実した情報が好評を博しており、ユーザー同士の交流も活発に行われているといいます。「このコミュニティを立ち上げるにあたって、一方通行の学習コンテンツではなく、ユーザーが自律的に参加してくれる場所にしたいというのが私たちの要望でした。ディスカバリーズの支援のおかげで、誰かが発言すればほかの誰かがアドバイスするなど、自然発生的なやりとりが行われるコミュニティになりました」(橋川氏)

現在ディスカバリーズは、隔日の状況確認ミーティングと週に一度の定例会議、それに加えてスポットでの打ち合わせにも出席。橋川氏が「もはやパートナーというよりメンバーの一員。PDCA サイクルを一緒に回してくれる存在」と評するほど、密接な連携体制が構築されています。

さらなる高みを目指して——今後の展望

AI 活用がスムーズに普及した結果、各事業会社独自の取り組みが進んでおり、これからはそれを制御していくフェーズに入るだろうと小畠氏。「そこでいかにエンゲージメントを下げずに活用・定着を促すかがこれからの課題」と気を引き締めます。橋川氏はその言葉に続けて、「そのためには、引き続き発信力がとても重要になります。私たちの取り組みをユーザーに正しく知ってもらうことが大切です。ぜひディスカバリーズにもお手伝いしてほしいと思っています」と、ディスカバリーズへの期待を語ります。

井上氏も、「私たちなりにユーザーの行動変容を促すような働きかけをしていきたいのですが、内部の人間だけではどうしてもパナソニック流になってしまいます。ディスカバリーズには、外部の視点から世の中の最先端の知見をぜひ教えていただきたいですね」と外部支援の重要性を改めて強調。

最後に、「ツールを渡すだけでなく、その活用によってどれだけ事業に貢献できるかが、これからの指標になります。PX とそれに連なる AI 活用の取り組みは、これからさらなる高みを目指していきます」という橋川氏の力強い言葉で、締め括られました。

私たちディスカバリーズも、顧客を深く理解し、そこに自分たちの強みを加える伴走支援サービスをますます強化して、パナソニックグループの皆さまの力になれるよう引き続き努めてまいります。

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